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JUGEMテーマ:読書
我々は悲劇役者、書かれている通りに動くだけ―――選択の余地なんてありません。
『ハムレット』の2次創作BLの王道と言えば、レア公(レアティーズ×ハムレットの通称、レアハム=レア公)ですが、そのリバ以上に多いのが、ロズギル(ローゼンクランツ×ギルデンスターン)かと思われます。公式設定が幼馴染であることや、常に共に行動しているあたりが、腐女子の妄想を掻き立てているんだと思っていたのですが、実際にはある金字塔的作品のせいで、多くのレア公派がロズギルに転んだせいらしいです。その金字塔的作品というのがこれ、『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』!
……というのは勿論嘘ですが、あれ?これってロズギル2次創作??って思ってしまったのは事実なんです。「お前の足を舐めてやる」とか、「お前が感じるようにグリングリンしてあげる」とか、何なのこの二人??
さて、『ハムレット』に登場する二人の脇役、すり替えられた手紙のせいで処刑されてしまうことになるローゼンクランツとギルデンスターンを主人公とした視点で『ハムレット』を描く、若きトム・ストッパードによるこの戯曲を読むにあたって、未読だった『ハムレット』を先に読んだのですが、私今までこの話、恋人を犠牲にしてしまったり、親友の恨みを買ったりしながらも、信念を貫いて ハムレットが復讐を成し遂げ事切れる話だと思っていたので、あまりの違いに驚きました。ハムレットは殺された父親の復讐に一心に進んで行くのではなく、何というかぐるぐるとした迷宮的な足取りで、事が成就されるのは、ハムレットの意思によってというより、突発的な成り行き、迷宮がいつしか中心点に到達するように、至るべくして至るものだったのです。狂気を装う理由にしても、復讐の機会を捉えるためではなく、ただただ事をなすかなさないか宙釣りな状態を長引かせるためだけのもののように 見えました。ハムレットは復讐譚における英雄ではなく、物語に踊らされる道化のようだったのです。
裏ハムレットとでも言うべきこの戯曲でのロズとギルは、自分たちが何のためにここに居るのか、これからどうすべきか全くわかっていません。しかしながら観客あるいは読者は、彼らの役割や運命を知っています。この当人は知らないが観客(読者)は知っている状態は時に喜劇を、時に悲劇を作り出しますが、自らの死に向かう物語の中で大変喜劇的に振舞わされているロズとギルは、まさに哀れな道化なのでした。それは、『ハムレット』におけるハムレットの姿であり、さらには哀しく可笑しい人間の姿でもあり……
船に乗ったのが間違いだった。無論、俺たちはここで自由に動けるし、フラフラ向きを変えたり、うろつき回ることもできる。でも俺たちがどう動こうと、それはもっと大きな動きの中に取り込まれていて、風や潮のうねりが俺たちを情容赦なく流していた……
評価:
トム・ストッパード 早川書房 ¥ 1,296 (2017-10-05) |