2018.03.25 Sunday
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やあ。
よかったら、ここにおいでよ。
気に入ったら、
ここが君の席だよ。
“わたしたちが世界の一部である限り、わたしたちの言葉もまた世界の変動のうちにある。どんなささやかな事物にも世界の力、世界の構造、世界の謎が影を投げている。静物画のように立ち止まった事物などありはしない。絶対的な正しい一語もありはしない。一人一人の見すえた現実、一人一人の紡いだ言葉が、人の数だけ世界を埋めつくすのだ。本書の文例の多様さは、目前の世界に立ち向かう表現の豊かさの表れでもある。もしそこに共通の美しさがあるとすれば、それは形式ではなく、自分の世界を自分の言葉で語ろうとするひたむきさにおいてである。”
「大正作家の場合だって、そうした構えがないとはいえまいが、作家それぞれの、身構え、心の構えよりも、語りの暢達さについつい惚れ惚れして、こちらの構えをととのえる暇もあらばこそ、一気に読み通してしまう。いや、読むというよりは、聴くという言い方のほうが、もっと実情に即しているかもしれない。すなわち、語りというよりは、語り口の、なだらかさ、のびやかさ、あるいは、まろやかさこそ、大正作家の随筆に共通する、なによりのめでたい特質なのである。」