靄靄読書録
もはや本のことしか書いていない……
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2006.12.15 Friday
author :
靄
四十日と四十夜のメルヘン
「四十日と四十夜のメルヘン」
青木 淳悟
想像以上に読むのに苦労しました。というのは、本の内容に問題があるのではなく、私自身のせいですが。
なんだかもう、現実逃避な日々、夢見る夢子さん、現実の身体はダンボールに挟まれつつも、心は脳内でやたらと小綺麗に整えられ、面積もかなり拡大されたドリーミーな新居で寝起きしているような状態、この壁にはちっちゃなシェルフをつけようかしら、ウフフ〜v、みたいな感じなんです。この荷物の山を見て現実に戻るんだー!しかし、現実に戻れば、戻ったで、遅々として進まなかった本山の梱包を黙々とこなし、ようやく終わりが見え始め、漫画ゾーンに突入したところで、思わぬ障碍が。何の気なしに手を休め、ふとページをめくったが最後、読み耽ってしまっているのです。昨日は、深夜に及ぶまで、『パイナップルARMY』全巻を読み返してしまっていました。だって面白いから。なんてなことを長々書いておりますが、早い話が忙しいんです。夢見たり、漫画読んだりでっ!
さて、この物語、非常に面白いです。ただ、ささーっと読める話かというと、そうではなく、かなり困惑させられる話です。なぜかというに、物語の地平がない、読者である私が立つべき地面が用意されていないからです。一体どう読めと??むしろ、どう読むかを読むべきなのか??
メイフラワーというアパートの4階に一人で暮らし、チラシ配りの仕事をし、創作教室とフランス語会話教室に通い、配りきれず持ち帰ったチラシが部屋に溢れ、そのチラシの裏にメルヘンを書き、隣人の新聞を盗み続け、メイキューではなく、OKマートで買い物する、そんな私の7月4日から7日までの4日間と後日の記録と、まとめていいのか?いいのか?いいのか?と、延々自問せざるを得ない内容です。さらりと断片的に記された4日間があれば、さまざまなところに焦点を絞ったものもあり、創作教室講師の作品についてや自作のメルヘンなど一点を掘り下げたもの、過ぎ去った4日間について書いている時点のほうが書かれたもの、繋がりを持ちつつも全く違う内容のもの、4日間について書いていたことも過去になった時点が書かれているもの等々、”私”によって書かれた4日間に関するさまざまな断片で構成されています。いや、私によって書かれたというのも、そういう前提に立っていいのかどうかもよくわからないのですが。
どう読んでも罠のようで、しかしながら著者自身が「構想を練るということはありませんでした。一文を書き、それに続く次の文を書く。だから自分にも、先が見えていませんでした」と、仰っているのですから、実際のところどう読んでもいいのでしょう。
私的にこの物語の肝は、チラシの裏感にあります。この物語、落書きのような、下書きのような、あるいは反古の堆積のような、そういうチラシの裏的断片が集められて一つの作品を構成しているように感じさせられるのですが、普通に断片の集積だったら、ただのチラシの裏ですが、そうではなくてあくまでもチラシの裏感なところ。”チラシの裏”として読まされてしまうと、一枚一枚のチラシの裏に、各々地平を見いだせるはずなのですが、チラシの裏感はあれども一編の作品であるため、あるはずの地平が見失われ、魔術的世界に連れ込まれたように感じさせられるのです。その面白さ。どう読むかを読むべきなのではなく、どうにも読めないのにどうにでも読めることを楽しむ物語なんだと思います。ところで、プチッ、プチッ、プチッ・・・梱包用プチプチシート、何気なく一粒潰したら止まらなくって・・・・。
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2006.12.01 Friday
author :
靄
銀のロバ
「銀のロバ」
ソーニャ ハートネット
うわー、早いもので、もう師走ではないですか。先生も走る走る、気忙しい季節がやって参りましたが、いつもは気分だけの忙しさなのですが、今年はどうして、なんだか必死、非常な忙しさなのです。なぜかというに、いよいよ引っ越しを決意したからです。寄る年波には勝てないと言いますか、この築40年は軽く経っていると思われる隙間風吹きすさぶ古アパートで冬を越すのがあまりに辛く、寒さが本格化する前に引っ越してしまおうというわけです。そんなわけで、せっせせっせと、荷造りやら掃除やらに励んでいるのです。
少しずつ荷造りしてゆこうと思って始めたところ、なんだか調子に乗ってどんどん箱詰めしてしまったため、今やダンボールの間にギリギリの生活スペースしか残っておらず、あらゆることをかなり無茶な体制で行わなければならない羽目に陥っています。ご飯はもちろん直立でいただいています。こうしてキーボードを打つのもあり得ない方向に身体を捻ってのこと。でも、何があり得ないって、実際の引っ越しは、まだまだ先の20日だってこと。まだまだ荷造りせねばならない荷物は山とあるので、決して気が早すぎることはないとは思うものの、こんな状態で何日も過ごさねばならぬとは・・・。これ以上ダンボールを増やすのもどうかと思い、手を休めて読書です。ソーニャ・ハートネットの『銀のロバ』。『木曜日に生まれた子ども』を読んでみたいと、気になっていたオーストラリアの作家ですが、こちらは児童書ということで、さらりと読めそうだったので、手にしました。
これは、好きです。脱走兵と幼い姉妹との交流という形で書かれているせいか、戦争の悲惨さが扱われた深刻な物語であるのに、なぜかほっこりとした気分にさせられました。また、ロバという、どちらかというとさえない印象の動物が主題とされているせいで、見せかけではない本当の優しさや強さ、勇気について思い致されます。
マルセルとココという10才と8才の姉妹が、キノコを採りに行った森で、死人のように横たわる男を見つけました。男は、シェパード中尉というイギリス人で、戦場から退いた脱走兵であり、故郷へと繋がるイギリス海峡を目指して歩き続け、力つきて倒れていたのでした。しかも、戦場での衝撃のせいか、逃亡の途中で、盲目となってしまっていました。マルセルとココは、病気の弟に会うために家に帰りたいという中尉の話を聞いて、中尉のことを大人には秘密にして、食料などを運び、なんとか協力できないものかと頭を巡らせ、兄とその友人とともにある計画を実行することにします。
さて、中尉はお守りとして、銀製のちいさなロバを持っており、姉妹と会うたびに、ロバにまつわる話をしてくれます。マリアを乗せてナザレとベツレヘムを命を削って往復した心優しい老ロバの話、心の荒んだものたちの姿に辟易して雨を降らせなくなった空に、再び雨を降らせるようにした、自らの苦しみを厭わない健気なロバの話、戦場で負傷兵を運ぶために、担架兵ジャックとともに活躍した勇敢なロバの話、病気の弟ジャックが、今中尉が手にしている銀のロバを見つけた時の話。どれも姉妹を涙ぐませる悲しく優しい物語です。
ジャックは、戦場へ向かう中尉に銀のロバを手渡す際、「このロバをみるたび、せいいっぱいがんばろうと思えるよ」と言いましたが、優しく、勇敢で、心が広く、我慢強く、控えめな、そんな高貴なロバの話を知ったからには、この手に銀のロバはなくとも、この本があるかぎり、「せいいっぱいがんばろう」と思わされます。辛くなったら、表紙のロバの絵を見て、心を奮い立たせようと思います。
そんなわけで、この劣悪な状況もなんとかロバを思って乗り切ろうと思います。というか、これしきのことで文句を言えない気分になっちゃいましたが。
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児童書
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