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2015.04.10 Friday
author : 靄
ルネサンスの女たち
ルネサンスの女たち (新潮文庫)
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評価:
塩野 七生
新潮社
¥ 680
(2012-07-28)

JUGEMテーマ:読書

なんだか3月あっという間でした。何してたかって、冬アニメの最終回ラッシュで忙しかったです☆『四月は君の嘘』で号泣し、『ユリ熊嵐』で号泣し、『アルドノア・ゼロ』で勝利の雄叫びを上げていました。誰得って、私得な最終話、素晴らしき伊奈スレ、すっきりしないと言われてますが、スレインはその後別人としての人生を与えられて種子島で大根作りに精を出すに違いない!とか思ってても大丈夫なくらい、オープンなエンディングで非常にありがたかったです。
4月は4月で、春アニメ始まりますし、はぁ〜まだまだ忙しいわ〜とか、思ってて大丈夫なのか?!と、自分で自分が心配な今日この頃。

「女を知ることは歴史の真実を知ること。ある時代をよく知ろうと思ったら、その時代の女たちをよく調べるとよい」とは、ゲーテの言だそうですが、この書ではルネサンス時代を生きた4人の女性、イザベッラ・デステ、ルクレツィア・ボルジア、カテリーナ・スフォルツァ、カテリーナ・コルネールについて書かれています。時代の流れの中でできる限りの手を打つもの、人の手駒となるのをよしとするもの、ただ流され翻弄されるもの、棹差し戦うもの、彼女たちの生き方はそれぞれ違いますが、彼女たちの人生を通して、当時の複雑なイタリアの情勢が多面的に書き出されています。

一人目のイザベッラ・デステ、カニグズバークの小説『ジョコンダ夫人の肖像』にイザベッラとベアトリーチェ姉妹が登場していましたが、なんか全然印象が違います。小説ではベアトリーチェは美人ではないものの非常に魅力的でよくできた女性として書かれていましたが、ここではもっとプライドの高い生々しい姿で書かれています。
イザベッラはフェラーラ公国のエステ家から隣国マントヴァの当主のところへ嫁ぎ、妹ベアトリーチェは大国ミラノ公国の摂政(とはいえ実際にはミラノの実権を握っている)イル・モーロことルドヴィーコ・スフォルツィアのところへ嫁ぎます。イル・モーロといえば、スペイン系のアラゴン王室の統治下になってしまっているナポリの王位継承権を主張するフランスにナポリ遠征を勧め、イタリアの転落の引き金をひいちゃった人物。

マンントヴァは、イタリアの要所にあるため、各国から狙われる難しい状況にあるうえ、夫のフランチェスコは敵対するヴェネツィアに囚われの身となってしまったりします。そんな窮地も、非常に堅実に対処するイザベッラがとにかくすごいです。その後も弟の治めるフェラーラを守るためにも奮闘し、チェーザレ・ボルジアに対してもつかず離れず巧妙にふるまい、さらには神聖ローマ帝国皇帝となったカルロスともしっかり渡り合います。

次に登場するのは、イザベッラの弟アルフォンソの妻であり、夫フランチェスコと恋仲にもなったルクレツィア・ボルジア、チェーザレ・ボルジアの妹です。非常に美人で、政略結婚に利用されるされる。
おおよそ金の力で法王となったボルジア家のアレッサンドロ六世とつながりをもちたいミラノは、ペーザロの伯爵ジョバンニ・スフォルツァと法王の娘であるルクレツィアとの婚姻を進めます。しかし、数年後には、ミラノの勢力が弱まったのを機に、ボルジア家のほうから夫であるペーザロ伯爵には性的能力がないという理由をつけられ婚姻を無効とされてしまいます。
次いでルクレツィアは、ナポリのアラゴン家との関係強化のため、庶出の王子アルフォンソ・ダラゴーナと結婚させられますが、チェーザレがフランス王の従姉妹と結婚し、フランスとの結びつきが強まったことで、むしろアルフォンソは邪魔な存在となってしまったためチェーザレによって暗殺されてしまいます(このあたりのことが、川原泉の漫画『バビロンまで何マイル?』では描かれていたのですね。この作品、もっと他の時代にも行ってほしかった〜)。その後はさらにフェラーラを味方にするため、当主であるエステ家(イザベッラの実家)の嫡子アルフォンソ(ややこしい!)・デステ(イザベッラの弟)と結婚させられることに。このアルフォンソは、型破りなところもありつつ、政才にも長けていたようで、義兄となったチェーザレやマキアヴェッリ、皇帝カルロスからも認められたほどだったそう。

アレッサンドロ六世の突然の死、ついで敵対するローヴェレが法王となってしまったことで、急速に力を失い捕らわれの身となった兄チェーザレの身を案じ、頼ったことがきっかけでイザベッラの夫フランチェスコと惹かれあう仲になってしまったそう。
その前には詩人のピエトロ・ベンボと恋仲だったりと、恋多き妻であるルクレツィアを、それでもアルフォンソは愛していたようで、ボルジア家の出ということで逆に立場の悪くなった妻をしっかり守り、チェーザレの死後はルクレツィアとの間に5人の子供ができました。

次は、まさに「イタリアの女傑」、イタリア中の男が逆らい得なかったチェーザレ・ボルジアに、真っ向から立ち向かったフォルリのカテリーナ・スフォルツァです。勇敢であるだけでなく、たいへん美人でもあったそう。しかも美しさの維持にも余念がなく、“美しくなるための処方箋”を残しているのだとか。美人とされたちょっと太目のイザベッラのことを「あんなに太っていてよく平気でいられる」とか言っていたそう。イザベッラがたくみな駆け引きで難しい局面を乗り切っていったのに対し、こちらは真っ向から立ち向かってしまうタイプのよう。
傭兵隊長からミラノ公国の主となった武張ったスフォルツァ家の生まれ。フェラーラのアルフォンソがルクレツィアの前に結婚していたアンナは嫡出の娘で、カテリーナは庶出の子でした。
ローマの対メディチ家対策として、カテリーナは法王シスト4世の甥で、ローマの軍事・政治を一手に担うジローラモ・リアーリロ伯爵と結婚することになります。リアーリオ伯は、フィレンツェでのメディチ家の支配を快く思わないパッツィ家に加担し、「パッツィ家の陰謀」を後押ししたことでメディチ家からの恨みを買い、頼みの伯父である法王が亡くなり力を失ったところで、メディチ家が援助したオルシ家などの陰謀が成功して暗殺されてしまいます。
ここからカテリーナの女傑人生がはじまります。捕らえられたカテリーナは、リアーリオ家に忠誠を誓い立てこもっているトマソ・フェオにラバルディーノ城塞の明け渡しを説得するよう城塞の前に連れて行かれます。6人の子供を人質に残し、説得のため一人で城塞に入ることを認めさせますが、これはカテリーナの作戦であり、城塞に入ったカテリーナはトマソとともに城塞に立てこもります。しばらく持ちこたえれば、自分の実家であるミラノからの援軍が来るとふんでの作戦。人質となった子供たちに剣を突きつけられ脅された際にとった行動は、まさに女傑。
 

“その時、城壁の上にカテリーナが姿を現した。裸足で髪も結わずに流したままの姿で。オルシは、城塞を出なければこの子供たちを殺す、といった。それに答えた彼女の言葉こそ、マキアヴェッリ以下、あらゆる歴史家に語りつがれた有名な一句である。やおらスカートのすそをぱあっとまくったカテリーナは叫んだ。
「何たる馬鹿者よ。私はこれであと何人だって子供ぐらいつくれるのを知らないのか!」
これには誰一人、しばらくの間は口も聞けなかった。”


メディチ家のロレンツォは自分が黒幕であることを隠すために、陰謀の首謀者たちにはその後援助しなかったことや、予想通りミラノや他の諸国からもリアーリオ側の援軍が来たことから、フォルリは無事リアーリオ家の手に戻ります。長男が当主と認められ、カテリーナはその後見人として、大国にかこまれロマーニャ地方の扉と呼ばれる要所にある小国の舵をとってゆくことになります。その腕は、時にフィレンツェからの使節、マキアヴェッリも手玉にとるほど。しかし、チェーザレ・ボルジアとフランス軍を前に真っ向から戦うも、敗れてしまいます。その後の屈辱的な監禁生活を経て、かつて敵陣に打ち込む大砲の玉に“きんたま云々”と書いた人とは思えぬほど胆力を失い、チェーザレ失脚ののちもフォルリを取り戻すことはできず人生を終えてしまいます。

最後のカテリーナ・コルネールはヴェネチアのコルネール家からキプロスの王ジャコモ2世のもとへ嫁いだ女性。トルコの脅威にさらされるキプロスがヴェネチアの協力を得るための政略結婚ですが、ジャコモが若くして亡くなってしまったことで、結果独立した王国だったキプロスがヴェネツィアに併合されるに至ってしまいます。政治的賭け引きに不向きだったこの女性の流されるがままな様は、同じカテリーナでもスフォルツァとは大違いです。


ルネサンス期と、かなり限られた時間の中の話にもかかわらず、もうイタリア史ってどうなっているんだかな、さまざまな国が牽制しあう複雑な有様、このあたりをもう少し長い期間に渡って簡潔に説明してくださるものってないかしら??
話はイタリアだけにとどまらないので、ちょっと世界史やりなおしたい気持ちになりました。
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