靄靄読書録
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2018.03.25 Sunday
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2007.11.26 Monday
author :
靄
りこうすぎた王子
評価:
青土社
¥ 1,680
(1999-07)
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読書
私的ステキニュースが舞い込んできました。
子供の頃、私が図書館で借りるといえば、この本ばっかりだったという、ラングの世界童話集の新訳が、東京創元社から出版されるそうではないですか!!!「みどりいろの童話集」からはじまって「くじゃくいろの童話集」まで12冊の童話集が偕成社文庫にはいっていますが(もともと1958年にこの野上彰&川端康成による翻訳を出版したのは東京創元社)、現在絶版なうえにその訳もちょっと古い感じで読みにくいところもあるので、新訳はとってもウレシイです!この機に乗じて、岩波少年文庫のほうも、ラングの創作童話『りこうすぎた王子』を復刊して下されまいか。あとどこの出版社様でもよいので、『りこうすぎた王子』の続編、『愚かすぎた王子』を出版してほしいなぁー。
ラングの世界童話集は知られていても、創作童話の存在のほうはあまり知られていないかもしれないので、その面白さについては声を大にして語りたいです。
さて、『りこうすぎた王子』とはいったいどういう王子でしょう。
なかなか子供がさずからなかったある王様とお后様のもとに、一人の王子が誕生します。王様は洗礼式のお祝いに、代々王家と関わりの深い仙女(@光吉夏弥訳 fairyのこと)たちを招待したかったのですが、非常に頭がよく、非科学的なことはてんで信じていないお后様の強い主張のために、招待できませんでした。ところが、式の当日、招待客たちはさまざまな障害のため、誰一人お城へくることがかなわず、祝宴の空いた席にはかわりに次々と仙女たちが現れました。仙女たちは、王子に対し、美しさや勇気のほか、使っても使っても空にならない財布、空飛ぶ絨毯、七里靴、かくれ帽子、願掛け帽子など、さまざまな素晴らしい贈り物をしました。しかし、ひとりだけ、おこりんぼの仙女は、王子に対し「りこうすぎる」という呪いを送ったのでした。
「りこうすぎた王子」こと、プリジオ王子のりこうさは、それが呪いなだけあって、もう本当に手がつけられないほどのものでした。幼少の頃から誰彼かまわず議論を吹っかけ、失礼も省みず料理長にはスープの作り方を、フェンシングの先生には剣の使い方を、クリケットの選手には球の投げ方を、大蔵大臣にはお金の〆高を、天文博士には地動説を教えてやったりします。どんなことでも誰にも負けないくらいよく知っていて、決して間違えることがなく、口癖ときたら「それ、ごらん、僕の言ったとおりじゃないか」。そのため、りこうなお后様以外のこの国の者は、王様も含めて、この王子のことが大嫌いになってしまいました。
この王子を誰よりも嫌っている王様は、王子を亡きものにするため、国に害を及ぼしている恐ろしい火竜の退治を命じました。しかし、プリジオ王子は、そんなものの存在は全く信じていませんから、あっさり断り、そのかわりに弟の二人の王子たちが出かけることになってしまいました。二人とも、勇ましく出かけたものの、結局帰ってくることはありませんでした。
自分の身代わりに行った弟たちが亡くなろうとも、そもそも火竜の存在を信じていないため、どこかをうろついているに違いない程度にしか考えておらず、なんの反省もない王子に、とうとう我慢できなくなった王様の命令により、王子を身ひとつでお城に残したまま、皆で遠くの町へ引っ越すことになりました。
着替えも、靴も、お金もない状態で、一人取り残されて困り果てていた王子様は、何かないかと城内をさがしまわるうちに、長く閉ざされていた屋根裏部屋で、お后さまによってガラクタとして仕舞い込まれていた、かつての仙女たちからの贈り物の数々を見つけ出します。それらの品々のおかげで、王子は美しく素敵な女性と出会い、恋に落ちてしまいます。その結果、自分がりこうすぎるために見えなくなっていた大切なものの存在をようやく理解できるようになりました。
いよいよここから、王子のりこうさと、魔法のアイテムとを十全に活かした面白い冒険がはじまります。今まではファンタジーの世界を否定していた王子が、その世界における困難を、持ち前の聡明さで解決してゆくのです。
ハラハラさせられるさまざまな困難を乗り越え、最後は、まさに四方八方めでたしめでたしな、大団円をむかえます。もうそこで大満足なのですが、さらに心憎い結末が添えられています。王子と結婚した女性は、王子が自分だけでなく、皆から愛される人になれるように、ほかの人よりりこうでなくなるよう願かけ帽子に願ってほしいと頼みます。それを了承した王子は、願掛け帽子に願い事を告げますが、りこうすぎた王子は実に実にとってもりこうな願い事をしたのです。クスリと笑って、笑顔で本を閉じられること請け合いです。
青土社の妖精文庫『幸福な王子』には、「プリジオ王子」というタイトルでおさめられています。
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2018.03.25 Sunday
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コメント
靄様と読んだ本が重なるのは嬉しいかぎりです。
ただし私が最初にこの本を読んだのは、多分30年代後半だったでしょうね(3丁目の夕日の少し後)。
本好きの一家で育ったせいだと思いますが。
最近読み返してみましたが、なかなか!
しかし私としては周りの人に同情したくなりますねやはり。
「過ぎたるは、及ばざるが如し」って?
私の読んだのは岩波版でした。
それより、、『愚かすぎた王子』って?
そんな本が存在したのでしょうか?
なんだか救いようが無い題名のように聞こえますが、もっとも「イワンの馬鹿」的な本もありますが。
| わんために | 2008/01/16 5:20 PM |
こちらにもありがとうございます。
”賢い”だけならいいですが、”賢すぎる”というのは、なかなか大変なようですね。つくづく人並みでよかったと思います。
「愚かすぎた王子」は、このプリジオ王子の息子の話なのだそうです。1920年代に「リカルド王子」という題で邦訳が出版されていたようですが、以後はまったく出ていなさそう・・・賢すぎる父の息子が愚かすぎるとは、これまた大変そうで、是非読んでみたいのです。
| 靄 | 2008/01/16 6:14 PM |
お邪魔致します。
ご存知かとは思うのですが
岩波少年文庫版、2010年に再販されました。
初めて読んだのは三十年程前になりますが、何でも知ってる頭でっかちな王子様なんて、ネットが発達した今の時代にこそぴったりな話だと思います。
|
通りすがりの者
| 2015/11/05 2:23 PM |
コメントありがとうございます!
2010年にでた福本訳、密かな願いがかなえられたようで嬉しかったです。
今の時代、お子様はもちろん、親御さんたちにも読んでいただきたいですね。
| 靄 | 2015/11/06 10:00 AM |
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=find-b&find_code=WRD&adjacent=N&request=
プリジオ王子とリカルド王子&x=0&y=0
| ご存知でしょうか | 2017/11/04 1:22 PM |
コメントありがとうございます!この本の存在は知りませんでした!りこうすぎた王子と愚かすぎた王子の話がセットになっているのでしょうか。いつかは手にしてみたいです。
| 靄 | 2017/11/04 6:07 PM |
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